飛行機という乗りもの....H.T

今回は、2009年7月に多発/計器飛行証明を取得そして2010年に事業用/事業用多発を取得なさったH.Tさんを取材するために名古屋へ出向きました。


三菱重工業株式会社 名古屋航空宇宙システム製作所で設計に携わっているH.Tさん。
スタッフ:「H.Tさん、お久しぶりです!今日はよろしくお願いします」
H.Tさん:「ようこそいらっしゃいました!どうにか雨が降らなくて良かったですね」と会社へ案内してくださいました。


三菱重工業株式会社の正門です。
ここ(右側に少しのぞいている時計台のある建物)で、零式艦上戦闘機いわゆる零戦が設計開発/製造されました。

 

....零戦は素晴らしい飛行機でした。何より格闘性能がずば抜けていました。
すごいのは旋回と宙返りの能力です。非常に短い半径で旋回出来ました。だから格闘戦では絶対に負けないわけです。
それに速度が速い。おそらく開戦当初は世界最高速度の飛行機だったのではないでしょうか。つまりスピードがある上に小回りが利くのです。....零戦はこの二つを併せ持った魔法のような戦闘機だったのです。
堀越二郎と曾根嘉年という情熱に燃える二人の若い設計者の血のにじむような努力がこれを可能にしたと言われています。
....航続距離が桁外れだったことです。
三千キロを楽々と飛ぶのです。当時の単座戦闘機の航続距離は大体数百キロでしたから、三千キロというのがいかにすごい数字か想像つくでしょう。
講談社文庫 永遠の0(ゼロ)百田尚樹より

 


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H.Tさんが勤務なさる設計部署は、こちらにあります。
この建物全てが設計部署だそうです。

周囲のイチョウ並木では近隣の人たちが銀杏を収穫していました。

 

H.Tさんは、現在の民間機の部署に移られる以前は、主に戦闘機の設計を業務としていました。
戦闘機に凝縮されているテクノロジー/性能に魅力を感じ、戦闘機と言えば三菱重工業 ということでご就職なさいました。
H.Tさん:「エンジニアとしての人生で、全機開発に携わることのできる機会はなかなか無く、一生に1機携わることができれば恵まれたほうではないでしょうか?」
戦闘機の全機開発には10年は期間を要します。おおよそ20年周期で新規開発となるケースが多いそうです。

そういう中で、H.Tさんはこれまでに戦闘機と実験機の2機の開発に携わっていらっしゃいます。

皆さん、設計というと、図面があってもしくは3Dデータがあって。。。とカタチをイメージされるかもしれませんが、実際の飛行機の設計では、満たすべき数字が先にできあがり、それを基にモノが作り上げられてゆきます。“この上昇性能を出さなければならないから、翼幅はこれぐらいで。。。”とか、”この荷重を満足しなければならないから、この部分の厚みはこの厚さで。。。”、といったように、飛行機の満たすべき要件を基に数字を決めていくのです。図面や3D CADはその決められた数字をもとに作成されてゆきます。

飛行機についてH.Tさん談
世の中に出て運用されている機体というのはさまざまな法律や基準に基づいて作られそして運用されています。
それは、材料、設計、製造、整備、運航、空域、管制、行政など、ありとあらゆる分野にわたってまたがっていて、しかもそれらの間には全て整合性が図られていて、しかもそれらは常に管理されている。
だからこそ「航空は大規模システムだ」と言われるわけで、べつに航空機が世界中にまたがって運航されているからそう言われているわけではありません。

アルミで作られているというより、膨大な紙で作られているのが航空機なのですよ。現実の機体を使って飛行をしたり、工作や整備や検査、時には管制の方と話をしたりしていると、頭の中にあるバラバラのものがあるとき関連づけられて「なるほど、こうつながっているのかぁ。」と思う瞬間があって、そういった発見が結構楽しく感じられますね。


全てが繋がっているんですよね。とおっしゃるH.Tさんに
スタッフ:「それでは、数字に強くて、几帳面でないとできないですね、気が短い人は航空機の設計は無理でしょう」と質問すると
H.Tさん:「確かに、数字の苦手な人や大雑把な人には、苦しい業務かもしれませんね(笑)また、航空機はシステムが複雑な分いろいろな部署に作業がまたがっていて、共通のインターフェースを持つことがおろそかになったために不具合を起こすこともしばしばあります。日頃からちょっと他の担当とコニュニケーションとって相手方の作業内容や進捗を確認するとか相手方の作業を理解しておく、といった心掛けも必要ですね。」

スタッフ:「それは、航空機設計者の必要条件ですか?」
H.Tさん:「うーん、航空機設計者に限らないと思うんですけど(笑)心配りっていうとこですかねぇ?どの世界でも同じだと思いますよ。結局それが自分の身を救うんですけど(笑)」
某大な数値のペーパー(書類)を基に設計され、製造され、そして運用される飛行機は、巨大な紙の塊とH.Tさんは言います。
また、「あまりにも規模が大きすぎて全貌を理解するのが一生かかってもできないであろう奥の深い工業製品」でしょうか。とも語っていらっしゃいました。

H.Tさんは、もともとFAA自家用、JCAB自家用、計器飛行証明のライセンスはお持ちでした。
パイロットライセンス取得において、
学生のころになりますが、航空学科に進学が決まった時点で、これから飛行機でご飯を食べて行くのだから設計だけではなく飛行機の操縦現場についても何らかの知識を持っておく必要があるだろう、と考えて、のことでした
とお答えいただきました。
昨年そして今年FAAライセンスを取得なさった理由においては、
仕事関係で特に必要というわけではないのですが、いいことがあるかも、ぐらいです。
ということでした。
訓練中、様々な操縦技術を習得するのですが、設計者であるゆえに「...だからこうなんだ!」と結びつく事があり訓練は楽しかったということです。


名古屋空港の隣に名古屋航空宇宙システム製作所 小牧南工場があります。
ここで、戦闘機の組み立てが行われます。

 

そして、隣接する名古屋空港から新しく製造されたり設備を終えた戦闘機が飛び立ち、配備先へと向かいます。

H.Tさんが開発に携わったF−2戦闘機もここで組み立てられ、試験飛行の後、納入されて行きます。

 


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現在、三菱航空機株式会社では、日本で開発される初めてのジェット旅客機となるMRJの製造を開始しました。
日本が独自の旅客機を開発するのはYS-11以来40年ぶりということです。開発には宇宙航空研究開発機構JAXAにも協力をいただいているとのことです。

名古屋空港滑走路の南延長に慰霊施設「やすらぎの園」があります。
最後に行きましょうと、車で案内してくださいました。

「戦闘機には、緊急時、脱出するシステムがあり、パイロットもそれなりに覚悟をして飛行しています。
でも旅客機にはそれがありません。乗客は、飛行機は当たり前のように飛んで、当たり前のように目的地に到着するものと信じています。

航空機に携わる人間は、彼ら一人一人の人生に対して責任を負っているのだということを十分に自覚していなければなりません。」と慰霊碑に手を合わせ黙とうするH.Tさんでした。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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